自宅で行う猫の皮下点滴のやり方

初めて自分で点滴した時は、緊張と不安、分からないことだらけでしたが、だんだんと慣れてくるものです。
自分がその時疑問に思ったこと、動物病院の先生から学んだことを記載します。
皆さまのお役に立てれば幸いです。

猫の皮下点滴に必要なものセット
点滴セット

STEP1. まずは必要な点滴セットを確認しよう

①輸液バッグ

猫ちゃんの皮下に入ったとき、冷たくてびっくりさせないために、人肌程度に温めます。
私が通っていた動物病院では、点滴バッグのゴム面や点滴チューブの差し口をどこにも触れないようにすれば、レンジでチンで大丈夫ですよ、と言われました。
時間のある方は湯煎にかけても良いと思います。

レンジで温める場合は、袋の表面を触った感じの温度と実際に出てくる液の温度に差があるので、慣れるまでは、流れてくる液の温度を手で受け止めてみて確認すると良いでしょう。
また、点滴バッグに500ml入っていますので、例えば1回にき100mlの点滴をする場合は5回分となります。初回は良いのですが、2回目からは、チューブに溜まっている液の分、最初に流れる液の温度が冷たいままになります。この部分はレンジでは温められないので、温かい液が出てくるまで液を捨てるなどで対応すると良いと思います。

バッグにはメモリが書いてあり、1メモリ分の液が減って100mlとなります。
加圧バッグを使う場合、加圧された状態で見るメモリの量と、圧をかけない時で見るメモリの量が見た目違うため、点滴中は時々圧を抜いてメモリの正確な量を確認します。

輸液ラベルアップ写真
輸液バッグ

②点滴チューブ

チューブの先端に白いプラスチックの針が付いているので、その針を点滴バッグのゴム面の丸い部分に刺します。ゴム面はアルコールで消毒し、毎回同じ部分に刺さないようにしましょう。

筒状の部分を人差し指と親指でつまむと、液がたまる仕組みになっています。
この筒に液をためることで、チューブの中に空気が入ることを防ぎます。
点滴バッグが筒よりも上にある時は、押すと筒に液が入り、点滴バッグが筒よりも下にある時は、押すと筒から点滴バッグに液が戻ります。

ローラーは、猫ちゃんに針を刺したあと、流したり止めたりするための装置で、上に上げると流れ、下に戻すと止まります。
ゆっくり流したい時は、ローラーを一気に上に上げずに、ちょっとずつローラーの位置を動かして調整します。

輸液点滴チューブ
輸液と点滴チューブをつなぐ場所
点滴チューブのローラーと筒

③ 注射針

針の種類は2種類あり、羽のあるタイプと羽のないタイプがあります。
羽つきは、猫ちゃんに刺したあと、猫の毛と羽をクリップで固定できるメリットがあります。
羽がついていない針の場合は、刺した部分を点滴中ずっと指で押さえている必要があります。
嫌がって動く猫ちゃんの場合は、羽と毛をクリップで固定したほうが取れにくいと思いますが、羽付きのほうは値段が高めです。
私が通っていた動物病院では、羽つき1本200円、羽なし1本50円でした。

針の太さにも種類があるようですが、一般的には21Gというやや細めのものから試してみるようです。太いほうが液の流れる速度は早いみたいですけど、太いと痛いので、なるべく細いほうが猫ちゃんにとっては楽ということです。

下記写真はどちらも21Gの針ですが、ウチの猫の場合は、羽がついていない針のほうが嫌がりませんでした。(といっても基本嫌がりますが)
良く見ると、針先のカットが違うみたいですね。

注射針の先端部分アップ(翼状針と羽なし針)

④ 加圧バッグ

加圧バッグは、点滴バッグに圧力をかけて、流れる速度を早し手早く終わらせるために活躍します。
レバーを右に回し、ポンプを握って空気を入れます。
空気を抜く時はレバーを下に回して、点滴バッグの入った加圧バッグ全体を握って押すと空気が抜けていきます。

注意しなければならないのは、膨らませた状態で見る点滴バッグのメモリ量は実際のメモリ量より多く見えてしまうという欠点があります。そのメモリを信じていると、点滴量を多く入れすぎてしまう危険性があるので、慣れないうちは、空気を途中で抜き、加圧してない状態で減ったメモリの量を確認してください。

加圧バッグがなくても、点滴バッグを強くにぎれば圧力が加わるので、点滴の速度は早くなります。最後の微調整は手で握って圧力をかけると良いかもしれません。

点滴用加圧バッグ
左:ポンプ部分 右:空気を入れて膨らませた状態

STEP2. 次に、注射針の刺し方を確認しよう

背中を触ると左右にある骨、肩甲骨がありますが、この肩甲骨のちょっと下あたりがベストポジションです。猫ちゃんが動くと理想の位置に刺せないことがありますが、動物病院に聞いたところ、肩甲骨よりも首寄りでも良いですし、右にずれても左にずれても問題ないとのことです。

猫に点滴する位置 肩甲骨の下

毛をかきわけて、肩甲骨下の皮膚を、人差し指・中指・薬指で下面を、親指で上面を十分につまみ上げ、面を作ります。
筋肉を刺さないように、針は皮膚と筋肉の間に入れます。
刺す向きは皮膚の面に対して直角です。

点滴針を刺すイメージ練習

イメージとしては、持ち上げた皮膚の中にできた空洞に、液を流し込む感じです。
この時、皮膚に面ができていないと、針が皮膚から皮膚へ貫通してしまったりするので注意。
針は根元までしっかりと刺します。筋肉に刺してしまわないかちょっと怖いのですが、しっかり皮膚を持ち上げて入れば大丈夫です。
流し入れた部分の皮膚は、ふっくらとしますが、時間とともに体に吸収されていきます。
痩せた猫ちゃんの場合は、角度のついた屋根のようなもので、ふっくらせずに、そのまま足の方へ液が流れていくこともありますが、時間とともに吸収されていきます。

猫の点滴の液を入れる場所ー皮膚と筋肉の間の空洞に入れるイメージ

STEP3. 最後に、点滴の流れを確認しよう

工程がたくさんあるように感じますが、一度経験すると、それほど複雑ではないので、安心してください。

1)輸液バッグを人肌程度に温める
2)点滴チューブを輸液バッグにつなぐ

3)点滴チューブの筒をつまんで圧力をかけ、半分程度に液をためます

4)点滴チューブのローラーを上に上げ、一度液を先まで流し、チューブ内の空気を出します。
5)加圧バッグのフックに輸液バッグをかけ、ポンプを押して加圧バッグを膨らませます。

自宅で点滴 吊るす

6)注射針を先端に付けます
7)翼状針の場合は、針にもチューブが付いているので、液を一度流し空気を出します。

8)左手で猫ちゃんの皮膚をつまみます(利き手が逆の方は左と右を逆で参照)
9)右手で針を皮膚の面に対して直角に刺し、針の根元までしっかり入れます

  • この時、痩せている脂肪のない猫ちゃんの場合は、引っ張っている皮膚のほうを針の方に向かって押すと安心して入れやすいと思います。
  • 針を根元まで入れたら、一度引っ張り上げた左手を離します。きちんと刺せていれば、離しても針が筋肉に刺さる訳ではないので大丈夫です。
  • そしてまた左手で、針の緑色のプラスチックと針の根元部分と皮膚(毛でもOK)を一緒に掴み直し、針先が筋肉から離すような感じで上に少しひっぱり、右手をフリーにします。(この時、皮膚の中に入っている針先部分まで掴んでしまうと液が流れないので注意)
  • 翼状針の場合、針を刺す時に翼の部分だけを持つと、ぐらぐら安定せず刺しにくいので、緑色の針の根元を一緒に持つと良い。
  • 針を刺す前に皮膚をアルコール消毒することをが多いかもしれませんが、猫ちゃんが痛がるので私が通っていた動物病院では皮膚消毒しない方針でした。
猫の背中に点滴針を刺す

10)ローラーを上げて、液を流します。
11)必要量が入ったらローラーを下に下げて点滴を止めます。
12)針を抜いて刺した部分を指でつまみ止血します。