出発までずっと見つめてる。
一緒に一晩寝た。
撫でたり唇をつけたりした。
まだ生きてるんじゃないかと思いたくなる。
だけど、冷たい体が旅立ってしまった現実をつきつける。
顔に近づけて匂いを嗅ぐとぴーちゃんの匂いがする。
安心する。
胸の痛みが治まる。
一緒に居れる最後の時間が迫る。
火葬場に行くために段ボール箱に入れた。
たまたまぴーちゃんの為に買った水が入っていた段ボールがぴったりだった。
綺麗な布を巻いて抱き抱えて電車に乗る。
花を買って、火葬場のあるお寺に向かう。
母も一緒に来てくれた。
昨日まで底冷えする寒さだったのに、今日は日差しが強く、歩いてると汗ばむほど。
樹木の赤い花が目に入る。春がもう来てたんだ。
ぴーちゃんと春を迎えられればいいなと思ってた。
今日は天気も良く悲しさも和らぐ陽気。
ぴーちゃんの気遣いなのだろうか。
火葬場の台には白い綺麗なシーツがかけられている。
ぴーちゃんを乗せて、周りに花を並べる。
私のこと忘れないでねと、顔の近くに私の写真を置いた。
手紙も一緒に。

肉体まで無くなってしまうと思うと、いつまでも離れられなかった。
見ているとまだ眠っているだけで生きているのではないかと思ってしまう。
匂いを忘れないようにあちこちの匂いを嗅いで何度もキスをした。
16年7ヶ月一緒にいてくれてありがとう。
また会おうね。と何度も何度も言った。
1時間ほど経ち、お骨になった。
不思議とお骨を見た瞬間は悲しいという感覚はなかった。
お骨のうち、星のような形をした尻尾、犬歯の骨を小さな袋に入れていただいた。
最初の1骨は母と一緒にお箸でそっと骨壷の中に移し、あとは丁寧に私が手で順番に入れていった。
真っ白な骨なので、若い猫ちゃんのよう、きっと幸せな日々だったんですね、とスタッフの方に言っていただいた。
家に帰り、お骨の壺と写真を飾り、お線香を手向けた。
ぴーちゃんは部屋の中にいない。
けど、お骨と写真があるお陰で、側にいるような気分になる。
でも、いつもと違う。
家が静かだ。
キャットタワー、ご飯茶碗、猫用クッションが目に入る。
この先、この静けさに耐えられるのだろうか。
お風呂に入りお見送りできたことに少しの安堵感があった。
私の人生の中で、こんなに幸せな16年7ヶ月があったんだと、
ぴーちゃんに感謝の気持ちでいっぱいになった。